シリコーンゴム製品の開発に取り組む場合、技術力のあるシリコーンゴムメーカーと組みたいところだ。
しかし自社の規模が小さかったり社歴が浅ければ「相手にされないのではないか…」と思うこともあるだろう。
個人事業として出発し、最近法人化したばかりの医療用品メーカーC社も同様の不安を抱えていたが、GTOと出会って試作から量産化にまでこぎつけた。
今回は社長であるH様にお話を伺った。

患者と医師の悩みに応える製品開発

C社が開発したのは、人工呼吸の際、気道を確保するために患者の口腔内に差し込む器具。

人工呼吸管理中、この器具が患者の唇や口の中を圧迫し傷や潰瘍ができてしまうことがある。
従来品のほとんどは樹脂製だが、長い間、硬さや形状に何の工夫も加えられずそのままになっていたのだ。

シリコーンゴム製品開発秘話写真5潰瘍が原因で口の中が痛くて食べられない。

患者から辛さを訴えられた医療従事者はなんとかそれに応えるべく改善したいところであるが、適当なものが見つからない。

医療従事者としては、器具の材質や形状が原因なのに、患者から文句を言われるのではたまったものではない。

ジーティオーが液漏れを防ぐ注射薬容器用の特殊ゴム栓「もれま栓」を開発したのは、注射器を容器から抜くときの抗ガン剤の飛び散りが医療現場で問題だったからだが、同じような隠れた問題が、別のところでもあったわけだ。

その問題を解決すべく、C社は商品開発に取り組むことになった。

「最初からシリコーンゴムを使うと決めていたわけではありません。もちろんシリコーンゴムは医療の世界では信頼性が高いのですが、エラストマーも検討していました。」と語るH社長。

そんなときに、高校の同級生の紹介で出会ったのがジーティオーだった。

「一応、他のメーカーも調べてみました。小さな会社なので、あちこちに試作を出すことは難しいですから。ジーティオーのホームページを見てキッチリしてくれそうな会社だと思ったのと、同じ大阪で打ち合わせもラクなのでお願いすることにしました。最終的な決め手は、藤田さんの人柄ですね。」(H社長)

駆け出しの小さな会社にも真摯に向き合う

人柄というのは漠然とした言葉だが、具体的にはどういうことなのか。

「駆け出しの会社ですし、最初は発注量も少ないので、受注側からすればすき間の時間にやる仕事かもしれません。でもこちらとしてもキッチリやってもらえないと、困るわけです。」(H社長)

これは樹脂メーカーの話だが、量が少ないとこちらの問い合わせに返事をくれなかったり、会ってさえくれないこともあったという。
商品開発アイデアについて話をしても「これは作りにくい」というだけで、ならばどうしたらいいのかという提案はなかった。

「技術に関してはシロウトですから」と謙遜するH社長だが、ジーティオーで最初に試作した製品には、実は満足していなかった。
硬さの異なるゴムをアセンブリーしたものだが、ゆがみがあるように見えたのだ。

そこで、この分野に詳しい知人に試作品を見てもらった。
金額も伝えたところ、これはかなり難しい加工であり「技術をもってる会社だし、その金額ならずいぶん頑張ってくれてると思う」という意見だった。
シリコーンゴム製品開発秘話写真6結果的に、その製品はコストが高くつきすぎるので量産化しなかったが、ジーティオーへの信頼を感じて依頼することに決めた。

次の試作品は医師から「手術で使っても大丈夫」とのお墨付きを得て、量産化することになった。

また、大手メーカーのOEMも決まったのだが、ゴムの成形が難しいことをご存じの担当者からは「思ったより、しっかり作っている」と言われた。

実績のほとんどない小企業が従来品以上のものを作ってきたことに、感心したわけである。

大きな挑戦を支えるたゆまぬ改善

シリコーンゴムの数少ない弱点の1つに、静電気を帯びやすく、ホコリを引き寄せてしまうという点がある。

製品をグレーやベージュに着色すればホコリが付着しても目立たないが、医療現場ではやはり「白」がベスト。
従来品にはブルーなどもあるが、H社長が「白」にこだわるのは、もっとも清潔感のある色だからというだけでない。

この器具は、注射針などと違い消毒して何度も使うことを許されている製品だが、だからこそあえて黄ばみや汚れが見えやすい色にして、劣化する前に新しいものと取り替えるべきである。

劣化したものを使用した結果、万が一患者が噛み切ってしまうと、気道が閉塞して窒息してしまう。
命に関わる事故を引き起こすわけだ。

汚れが目立つ色であるに関わらず、ホコリが付着していてはいけない。
このような厳しい要求のため、初回生産では予想より不良率が高かった。

しかしジーティオーは、次の発注までに工程の改善や検品の強化をおこなうと約束している。

「長いつきあいをするには、改善をしていくことが必要です。薬の値段が2年おきに引き下げられるため、医療器具も含めて病院は出入り業者にコストダウンを要請してきます。改善して不良率が低減すれば、この製品の価格も下げることが可能になります。」(H社長)

量産化し販売を開始してまだ日が浅いが、納入先の医師からは良い評価をいただいているという。

まだ小さなC社であるが、この製品は医療現場の隠れたニーズを掘り起こしたものであり、大手企業のOEMも決まったため、大量に売れることが見込まれる。
海外への販売も視野に入っている。

インタビュー中、何度も「長いつきあい」という言葉を口にしたH社長。

これから大きな市場へ打って出るためのパートナーとして、ジーティオーを見ているようである。

2013/01/24